世界初 無菌メダカの作出に成功!

投稿者: | 2023年9月13日

メダカ免疫システムの正常な機能には腸内細菌と腸の相互作用が必要であることを発見

 近年、私たちの健康維持における「腸活」の重要性が謳われており、様々な種類の腸内細菌やそれらのバランスが免疫力の維持に関わることが明らかになっています。腸内細菌が正常な免疫機能の維持に関与していることは魚類でも予想されていましたが、実際に検証するには体内に腸内細菌が存在しない「無菌メダカ」を作出しなければならないという壁がありました。このような背景の中、宇都宮大学地域創生科学研究科博士前期課程1年の坂口ひよりさん(栃木県立大田原女子高等学校卒)とバイオサイエンス教育研究センターの岩波礼将特任准教授を中心とした研究グループは、無菌状態でメダカ幼魚を育てることに世界で初めて成功し、腸内細菌が腸管の発達と免疫システムの正常な機能に必要であることを証明しました。
本研究成果は9月12日付で国際学術誌Frontiers in Immunologyに掲載されました(オンライン版)。

通常、メダカは孵化すると同時に周りの細菌を口にすることで腸内細菌叢が形成されます。一方、坂口さんらはメダカの卵を無菌状態で孵化させ、滅菌済みの餌を与えることで無菌メダカを作出しました。通常の条件下で飼育し腸内細菌が存在するメダカと無菌メダカを比較した結果、無菌メダカでは生体防御応答に関わる遺伝子群の働き(発現)が低下しており、腸管上皮細胞の発達異常が見られました。したがって、綺麗すぎる環境で育つメダカは免疫機能が成熟しないことが明らかになりました。

次にメダカの免疫システムが腸内細菌に与える影響を調べるため、腸内細菌を含めた水中の微生物に対応できるリンパ球を持たない免疫不全メダカを用いて実験を行いました。その結果、免疫不全メダカでは特定の細菌だけが顕著に増加することで腸内細菌のバランスが徐々に失われたことから、メダカの免疫システムは正常な腸内細菌のバランスの維持に必要であることが明らかになりました。以上の結果から、メダカの免疫機能と腸内細菌は相互に影響を及ぼしあうことが明らかになりました。腸内細菌とメダカの免疫機能の関係を示した今回の研究成果は、共生進化の理解に役立つ学術的意義に加え、水産業や養殖業において魚類の健康維持にも応用できることが期待されます。

本件に関する問合せ
(研究内容について)
国立大学法人 宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター 
教授 松田勝 / 特任准教授 岩波礼将
TEL:028-649-5527 FAX:028-649-8651 E-mail: matsuda@cc.utsunomiya-u.ac.jp
(報道対応)
国立大学法人 宇都宮大学 広報室(広報係)
TEL:028-649-5201 FAX:028-649-5026 E-mail: kkouhou@miya.jm.utsunomiya-u.ac.jp

詳しくはこちら