教員について
氏名:松田 勝(まつだ まさる)
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職種:教授
学位:博士(理学)
略歴:1992年 東京水産大学卒業、1994年 同博士前期課程修了、1997年 新潟大学大学院博士後期課程修了
日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業研究員、日本学術振興会特別研究員、
科学技術振興機構CREST研究員、科学技術振興機構さきがけ研究21研究員、
などを経て2007年4月より宇都宮大学の教員となる。
2007年日本動物学会学会賞受賞
2008年平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞
2008年第7回日本農学進歩賞受賞
担当講義:分子生命科学 I
修士学生の所属:地域創生科学研究科 工農総合科学専攻 分子農学プログラム 分子遺伝学研究室
博士学生の所属:東京農工大学大学院 連合農学研究科 応用生命科学専攻 応用生物化学大講座
メダカのページをつくりました←現在構築途中!
修士課程、博士課程の学生も募集しています。私たちと一緒に研究することに興味のある方は、気軽に連絡下さい。
博士課程は、東京農工大学大学院連合農学研究科に入学することになります。入学の申し込み〆切は、10月入学は6月、4月入学は1月です。通常、受付時間は短期間なので、学生募集要項を注意深く読んでください。
修士課程は、宇都宮大学大学院地域創生科学研究科工農総合科学専攻分子農学プログラムに入学することになります。学生募集要項の概要を参考ください。
メンバー
岩波 礼将 特任准教授
川田 千尋 特任技術職員
大塚 待子 博士特別研究生
坂口 ひより 修士2年
小井田 理奈 修士2年
大竹 俊資 学部4年
日高 美希 学部4年
橋詰 千智 学部4年
マウレン ルマイヌム 学部4年
齊藤 優汰 学部3年
武井 遥希 学部3年
牧野 憲太 学部3年
深谷 菜月 学部3年
研究テーマ
(1)メダカの性決定・性分化
メダカの性決定・性分化について研究しています。簡単に言うと、メダカのオスとメスとがどのように決まっているか?というテーマについて研究を行っています。もう少し専門的に言うと、メダカを実験材料に性差が構築される時の遺伝子の働き(性差構築の分子基盤)を明らかにしたいと思っています。脊椎動物の場合、個体の性別は、生殖腺が精巣か卵巣かで決まります。つまり、精巣でも卵巣でもない未分化(英語ではbipotential、精巣・卵巣のどちらにも分化可能の意味)な生殖腺が精巣に分化するのか、それとも卵巣に分化するのかによって、個体の性別は決定されます。多くの脊椎動物において、性別は遺伝的に決められています。このことは、これらの脊椎動物には性決定遺伝子が存在することを意味しています。しかしながら、当時脊椎動物において性決定遺伝子は哺乳類のSRY/Sry遺伝子とメダカのDmy遺伝子の2つしか見つかっていませんでした。メダカのDmy遺伝子を同定したのは私を中心とした日本の研究グループです。
左を向いているメダカは性決定遺伝子の導入により性転換した遺伝子組換メダカです。性染色体型はXXですが、導入された性決定遺伝子の働きでオスに分化しました。
この論文を発表したときのプレスリリースはこちらです。
私の研究室では、遺伝学、発生生物学を基盤に分子生物学的手法を駆使して、メダカの性分化の仕組みを明らかにしようとしています。特定の遺伝が機能しなくなった遺伝子破壊メダカを使ったり、遺伝子組換技術(トランスジェニック技術)を駆使することで、生物のしくみを遺伝子のレベルで明らかにしようとしています。
また、メダカの卵や稚魚は透明なので、蛍光タンパク質を導入したトランスジェニックメダカを使うことで、生きたまま遺伝子の働きを調べるということも可能です。このようなバイオイメージングの技術も併用して、「メダカの性別が決定されるしくみ」を明らかにしていきたいと考えています。
もう少し具体的なことを書くと、...
メダカそのもの(in vivo)の解析もするし、培養細胞や試験管内(in vitro)の実験も行います。つまり、メダカを飼う、個々の個体の遺伝子型を調べる、組織切片を作成して体内の細胞の様子を観察するというメダカがどうなっているのか?という研究から、培養細胞、酵母、大腸菌などを使って遺伝子産物であるタンパク質そのものの機能解析を行うなど研究手法は多岐にわたります。
「メダカの性決定の仕組み」がわかるとどんなことに役に立つのか?について、以下のようなことをイメージしています。
さまざまな生命現象において、哺乳類と魚類との間でも遺伝子のレベルでみると驚くほどの共通性のあることが分かってきています。相同な(似ている)遺伝子が同じ働きをしていることが多いのです。哺乳類の精巣や卵巣で特異的に働いている遺伝子の多くは、魚類でも精巣や卵巣特異的に発現していることが分かっています。つまり、魚類で明らかとなった遺伝子レベルの知見は、哺乳類にも応用できることが多いのです。
メダカはほ乳類以外の脊椎動物の中で唯一性決定遺伝子の分かっている種です。(正確に言うとメダカに近縁なハイナンメダカもメダカと同じ遺伝子が性別を決定していることが分かっています。2012年までの話)一方、メダカを始め多くの魚類や両生類では、生殖腺の未分化な時期に性ホルモンの影響を受けると本来(遺伝的には)雄になるはずの個体が雌に成ってしまったり、その逆が起こります。この場合、性転換した個体が正常なことも多いため、野生の状態の個体が遺伝的に雄なのか雌なのかを判断するのは不可能です。近年の地球環境の変化は野生動物の性別に大きな影響を与えると考えられていますが、実際に野生で完全な性転換が生じているかどうかを調べることは難しいのです。ところがメダカは性決定遺伝子が分かっていますから、野生メダカの遺伝的な性別を決めることができます。野生メダカの遺伝的性別と表現型の性別を比較する研究は、新潟大学のグループが精力的に行っています。その結果、多くの突然変異体が得られています。その中には、Dmy遺伝子が機能しなくなったり、その機能が弱くなっている(実際にはmRNAの合成量が減少している)個体が見つかっています。このような個体ではDmyを持つ、つまりY染色体を持っているのに雌に分化してしまいます。[つづく]
最近分かったおもしろいこと
・魚類は種ごとに性決定遺伝子が違いそうなこと
・X染色体とY染色体との間の違いは1塩基でもよいこと
・メダカは通常、雄へテロの性決定様式(XX-XY型)であるが、DmyのmRNA量低下により雌へテロの性決定様式(ZZ-ZW型)へと変換しうること
・性決定遺伝子の導入により性染色体をつくることができること
・性決定遺伝子をつくることができること
(2)栃木県産野生メダカの多様性
せっかく栃木県で研究をするのだから、栃木のメダカを使った研究を展開できたらよいなと考えています。具体的には、野生メダカの遺伝子型を調べることで、在来集団と放流集団を区別できるようにしたいと思っています。
↑野生のメダカをすくいに行きました。
ここ数年でいろいろ分かってきました。もう少し進めたいと思っています。
つづく、...
施設&設備
ゲノミクス研究棟は地方大学の施設とは思えないほど設備が充実しています。研究をバリバリやっているような一流大学や研究所に備わっているような装置はほぼ揃っています。さらに、比較的小さな建物内に、学生室、メダカ飼育室、実験室、顕微鏡室、培養室、機器室などが一体となっていて、コンパクトで効率よく実験できる施設(環境)はあまりないでしょう。私のキャリアの中でも一番研究環境がよいです。学生さんにとっても集中して研究するには良い環境です