宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターの専任教員である松田勝准教授が平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。受賞対象の研究は、「メダカ性決定遺伝子の同定による性判別システム構築の研究」です。この賞は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的としています。若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績を挙げた若手研究者個人を対象としています。授賞式は、4月15日に虎ノ門パストラルで行われる予定です。
賞に関する詳しい説明(文部科学省のHP)
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松田 勝 准教授 紹介
略歴:1997年 新潟大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、科学技術振興事業団さきがけ研究21「認識と形成」領域専任研究員、等を経て、2007年 宇都宮大学遺伝子実験施設准教授着任、2008年 改組により宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター専任准教授、現在に至る。
博士課程在学中より、メダカの性染色体の解析に携わる。基礎生物学研究所に移籍後、メダカ性決定遺伝子同定プロジェクトの中核として研究に携わり、2002年、ほ乳類のSRY/Sry遺伝子に次いで2番目となる性決定遺伝子DMYの同定に成功した。
この賞に関する業績
ヒトを含めたほ乳類の性別はY染色体上の遺伝子によって決定されることが分かっていたが、ほ乳類以外の脊椎動物においては、そのような役割をもつ遺伝子は全く不明であった。受賞者は古くから日本人研究者によって研究されてきたメダカを材料として、脊椎動物で2番目となる性別を決定する遺伝子の同定に成功した。一方、内分泌かく乱作用をもつ化学物質暴露や高温処理により、魚類は容易に性転換してしまうことが実験室内では確認されている。このため、地球温暖化など地球環境の変化が野生動物の性分化に与える影響は懸念されていたが、これを検証する手だてはなかった。受賞者が発見した性決定遺伝子を指標として野生メダカの性判別システムを構築したことで、野生メダカの遺伝的性別を確実に判定可能になった。このことにより、これまで懸念されていた野生メダカの性転換を実際に検証することが可能となった。
松田 勝 准教授 受賞コメント
この度、文部科学省より、平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞という賞をいただけることとなりました。ヒトの性決定遺伝子発見以来多くの研究者が追い求めていたほ乳類以外の性決定遺伝子を日本で開発された実験動物の一つであるメダカから発見したこの研究の大部分は、基礎生物学研究所の長濱 嘉孝 教授の研究室に在籍した間に行われました。また、新潟大学の酒泉 満 教授、濱口 哲 教授との共同研究の成果でもあります。これらの共同研究には、ここに名前を挙げられなかった多く人々が関わっています。 今回の受賞につながったこれまでの研究成果は、ひとえに皆様のご支援のおかげです。 ここに、深く感謝の意を表したく存じます。
昨年4月より宇都宮大学に新しい研究室を立ち上げ、まだまだ完全ではありませんが、さらによい研究ができるようにしていきたいと考えています。これからもよろしくお願いいたします。