平成23年度の蚕糸・昆虫機能利用学術講演会(日本蚕糸学会・第81回総会)※1において、バイオサイエンス教育研究センター・アイソトープ利用部門長である川崎秀樹農学部教授が日本蚕糸学会賞を受賞しました。日本蚕糸学会は80年以上続く歴史ある学会であり、同賞は蚕糸学の発展に貢献した研究者に対して贈られる名誉ある賞です。
カイコは、家蚕(かさん)とも呼ばれ、人による管理なしでは生育できない完全に家畜化された昆虫で、野生には生息しません。カイコの幼虫は、脱皮して大きくなり、通常5回脱皮したところで繭をつくりその中で蛹になります。カイコ繭は絹糸の原料となるため、昔からカイコは産業上有用な昆虫として利用されてきました。またカイコは、大型昆虫で発育がそろいやすく、ゲノム配列も明らかにされているため、現在では実験動物としても盛んに利用されています。
川崎教授は、長年、カイコの蛹が羽化して成虫になる時に翅(はね)がどのように形成されるかを研究してきました。これまでの研究において、昆虫ホルモンの一種であるエクダイソン※2によって、細胞の分裂が始まり、翅が形成されることを明らかにしました。
今回の受賞では、昆虫ホルモン・エクダイソンによって調節される複数の有用遺伝子をカイコから発見しただけでなく、翅が形成される分子メカニズムの一端を明らかにしたことが高く評価されました。このような一連の研究は、昆虫の発育制御による害虫防除に役立つ可能性があるため、川崎教授の今後の研究に期待が寄せられています。
<補足説明>
※1 東日本大震災の影響により中止されました。
※2 昆虫の前胸腺から分泌されるステロイドホルモン。脱皮を促進する作用があり、脱皮ホルモンとも呼ばれる。
[本件に関する問い合わせ先]
宇都宮大学・農学部・生物生産学科・昆虫機能利用学研究室 Tel: 028-649-5455(研究室)
教授 川崎 秀樹(かわさき ひでき)