植物ホルモンであるストリゴラクトンは、植物の枝分かれを抑制する機能以外にリン栄養を供給することで植物の成長を助けるAM菌の共生を促進する機能を持っており、農業生産性向上に役立っています。その一方で、この化合物は農作物に寄生する根寄生雑草の種子発芽を誘導し寄生を促進することで生育を阻害する物質としても働いています。
東京大学大学院農学生命科学研究科 浅見忠男教授、東京農業大学生命科学部 伊藤晋作准教授、宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター 野村崇人准教授、サウジアラビアKing Abdullah University of Science and TechnologyのSalim Al-Babili教授らの共同研究チームは、四環性ストリゴラクトン特異的な生合成阻害剤TIS108を開発し、この化合物を処理したイネにおいては四環性ストリゴラクトン量が減少するにもかかわらず、収量に大きな影響をあたえる過剰な枝分かれが誘導されないことに加えてAM菌の共生が可能であることを見出しました。これらの発見はこれまでの常識を覆し、二環性ストリゴラクトンは植物ホルモンとしての機能が、四環性ストリゴラクトンは根圏のシグナル物質としての機能が主要であるという知見をもたらしました。続いて四環性ストリゴラクトン生合成のみを阻害できるこのTIS108処理したイネやTIS108の標的酵素をコードする遺伝子の働きをゲノム編集で抑えたイネでは、期待通りに根寄生雑草被害が大きく低減することも見出しました。 本研究の成果は、世界の多くの地域で甚大な被害を与えている根寄生雑草の防除のための化学的や生物学的な新しい技術開発に大きく役立つものと考えられます。
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バイオサイエンス教育研究センター
准教授 野村 崇人
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