スギヒラタケを原因とする急性脳症に新たな知見―3つの成分が複合的に発症に関与ー

投稿者: | 2022年11月16日

スギヒラタケ(Pleurocybella porrigens)はキシメジ科スギヒラタケ属のキノコで、北陸、中部、東北地方を中心に食用とされてきました。しかし2004年9月以降、新潟・山形・秋田の各県でこのキノコの摂取による急性脳症が疑われる事例が発生しました。

図1 急性脳症を引き起こすスギヒラタケ

その当時、上記は戦後最悪の食中毒事例とされ、大きく報道されました。また同時に、厚生労働省は研究班を立ち上げ原因究明に努めましたが、最終的には「原因不明」と結論付け2006年に研究班を解散しました。

静岡大学の河岸洋和 特別栄誉教授(当時研究班にも在籍)、宇都宮大学の鈴木智大 准教授、東海大学の浅川倫宏 准教授、国立環境研究所の前川文彦 主幹研究員らの研究グループは、研究班の解散後もこのキノコによる急性脳症発症機構の解明に継続的に取り組み、以下を明らかにしました。

図2 推定されるスギヒラタケ急性脳症のメカニズム

(1)このキノコから、マウスに対して致死活性を示す新規のタンパク質(プレウロサイベリン:PCと命名)の精製に成功しました。

(2)PCと、このスギヒラタケ由来のレクチン1(PPL)が複合体を形成し、タンパク質分解活性を示すことを明らかにしました。

(3)PCおよびPPLと、過去に神経細胞に毒性を示す化合物としてこのキノコから単離構造決定されたプレウロサイベルアジリジン注2(PA)の3つの混合によって、マウスの脳内に障害が起きることを明らかにしました。 上記の結果から、「スギヒラタケ中の3つの物質が急性脳症の発症に関与する」という新たな毒性メカニズムを提唱しました。本研究成果は、2022年11月12日、国際学術雑誌「Toxicon」のオンライン版で公開されました。

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バイオサイエンス教育研究センター
准教授 鈴木 智大
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