高橋 美智子 准教授が科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞

投稿者: | 2010年4月8日

宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターの兼任教員である高橋美智子准教授(農学部)が平成22年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。受賞対象の研究は、「高等植物におけるニコチアナミンの役割と機能に関する研究」です。この賞は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的としています。若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績を挙げた若手研究者個人を対象としています。授賞式は、413日に京王プラザホテルで行われる予定です。

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高橋 美智子 准教授 紹介

略歴:平成10年 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻博士課程修了、博士(農学)。日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院農学生命科学研究科助教、等を経て
平成20年 宇都宮大学農学部准教授着任、現在に至る。

受賞研究の概要

植物の成長や生殖には、鉄や亜鉛などの金属が必須です。高橋先生は、イネ科植物の鉄吸収に重要な役割をしているニコチアナミンアミノ基転移酵素(NAAT)の遺伝子を単離しました。そして、鉄欠乏に弱いイネに、鉄欠乏に強いオオムギのNAAT遺伝子を導入することで、鉄欠乏耐性イネの作出に世界で始めて成功しました。さらに、ニコチアナミンが高等植物で花や種子に鉄や亜鉛を輸送し、正常な花や種子の形成に重要であることを見いだしました。

また、汚染された土壌を植物の力を借りて浄化するファイトレメディエーションに有用なニッケル過剰耐性タバコの作出にも成功しています。

 

詳細な研究内容

本研究の目的は金属元素のキレーターであるニコチアナミンの機能と役割を明らかにするとともにその機能を利用し有用な作物を作出することです。植物の本来持つ鉄獲得機構や鉄や亜鉛の植物体内における輸送機構、生殖生長および種子成熟期における金属の役割、金属過剰耐性機構をニコチアナミンに着目して明らかにしました。得られた基礎生物学的知見を応用し、有用な植物の作出に成功している点でこの研究は非常に優れた研究です。

○ニコチアナミンの生理作用

金属元素のキレーターであるニコチアナミンが花器官や種子へ鉄や亜鉛を輸送するのに必須であり、高等植物の生殖成長、種子の稔実に不可欠であることを明らかにしました。(図1)

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図1 ムギネ酸類の生合成経路

 

○ 鉄欠乏耐性イネの作出

鉄欠乏に弱いイネに、鉄欠乏に強いオオムギのNAAT遺伝子を導入することで、鉄欠乏耐性イネの作出に世界で始めて成功しました。(図2)

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図2 アルカリ土壌栽培による鉄欠乏耐性検定後の対照のイネ(左)とゲノムNAAT遺伝子導入イネ(右)

 

○ニッケル過剰耐性タバコの作出

ニコチアナミンをたくさん作るタバコは(図3)、ニッケルを高濃度に含む土壌でも生育できることから、汚染された土壌を植物の力を借りて浄化するファイトレメディエーションへの応用が期待されます。
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図3 ニッケル過剰土壌における通常のタバコ(NT)とニコチアナミンを過剰に合成するタバコ(S1)播種25日(A)、35日(B)、2ヶ月(C)

本件に関する問い合わせ先

宇都宮大学農学部 生物生産科学科 植物栄養生理学研究室
(宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター 兼任)
准教授 高橋 美智子(たかはし みちこ)
Tel: 028-649-5422