丸岡 奈津美 博士 日本動物学会女性研究者奨励OM賞を受賞

投稿者: | 2025年9月9日

環境生理学研究室所属の丸岡奈津美博士(日本学術振興会特別研究員PD)が、「野外ミジンコ個体群の共存を支える休眠戦略の分子基盤の解明」に関する研究成果により、2025年度 日本動物学会 女性研究者奨励OM賞を受賞しました。本賞は、不安定な立場にありながらも、強い意志と高い志をもって優れた動物科学研究を推進する女性研究者を支援・顕彰することを目的とした賞です。丸岡博士は本研究において、野外環境における競争の中で、同種であり生態学的ニッチが重複するミジンコ系統がどのように共存しているのかという、生態学の根幹に関わる課題に取り組んできました。

まず、絶対単為生殖型ミジンコの複数系統を対象に、餌をめぐる競争能力と分布範囲の関係を解析した結果、競争能力の優劣と分布範囲の大きさが必ずしも一致しないことを明らかにしました。さらに、競争に劣位な系統が共存できる理由として、競争相手を察知すると休眠に入ることで競争を回避し、個体群を維持しているという仮説を立て、野外調査と室内実験によってこれを実証しました。従来、休眠は低温や乾燥といった不利な環境条件を乗り越えるための戦略と考えられてきましたが、本研究は、休眠が「競争回避」という新たな機能をもつことを世界で初めて示し、休眠戦略の違いがミジンコ種内系統の共存を支えていることを明らかにしました。

さらに丸岡博士は、休眠卵生産を制御する分子基盤の解明にも取り組みました。RNA-seq解析により、休眠卵生産時に特異的に発現変動する遺伝子群を網羅的に探索し、候補遺伝子を同定しました。その中には、昆虫類で生殖や変態に関わる幼若ホルモン(JH)の分解酵素が含まれており、ホルモン応答性の違いが休眠戦略の差を生み出している可能性が示されました。

本研究は、生態学的な「競争と共存」の問題に、分子レベルの制御機構から迫る先駆的な成果であり、「種内多様性」と「個体群の維持・共存」を結びつける新たな理論的枠組みを提示した点が高く評価され、今回の受賞につながりました。

なお、授賞式は、2025年9月4日~6日に名古屋で開催された日本動物学会第96回名古屋大会において執り行われました。