2025年度

第123回C-Bioセミナー

2025年6月2日月曜日14:20~15:50(ゲノミクス研究棟2階セミナー室)
 講師:戸高 大輔 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター
植物の環境ストレス耐性を向上させるエタノールプライミング
気候変動により、農作物の乾燥や高温ストレスによる被害が増えている。近年、ケミカルプライミングという手法によって植物の環境ストレス耐性を向上させる研究が盛んにおこなわれている。ケミカルプライミングは、特定の化合物で植物を予め処理することでその後曝されるストレスによる障害を軽減させる技術である。我々の研究室では、低濃度のエタノールで植物を予め処理することが環境ストレス耐性の強化を誘導することを見出した。本講義では、このエタノールによるプライミング機構の仕組みを解明する研究内容について紹介する。

第122回C-Bioセミナー(第8回イチゴセミナー)

2025年5月23日(金)14時00分~
場所:対面(宇都宮大学峰キャンパスゲノミクス研究棟2Fセミナー室)およびオンラインのハイブリッド形式
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講演者:内藤 健 博士(農研機構 遺伝資源研究センター)
タイトル:ナノポアシーケンサーの長さと精度、そして野生植物のストレス耐性の話
内容:まず、ナノポアシーケンサーで読めば複雑な植物ゲノムでもよく繋がるよ、という話をします。当初は「まともにデータが出ない」「配列が読めてもエラー率が高い」など散々な言われようだったナノポアですが、時間とともに扱いやすさも精度も劇的に改善しています。今やリード長は100 kbp をゆうに越え、精度も99%を超えるまでになりました。ヘテロ性の高いゲノムや同質倍数体のゲノムでも、染色体が完全に繋がることも珍しくありません。ナノポアシーケンサーはきっとイチゴ研究の役に立つと思います。
残った時間で、内藤が長年携わってきた野生植物のストレス耐性の研究の話を紹介します。耐性遺伝子の同定に繋がる比較ゲノム研究の一例として、参考にしてもらえたら幸いです。

第121回C-Bioセミナー(第7回イチゴセミナー)

2025年4月30日(水)15時30分~
場所:対面(宇都宮大学峰キャンパスゲノミクス研究棟2Fセミナー室)およびオンラインのハイブリッド形式
講演者:児玉 豊 教授(宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター)
タイトル:イチゴの光合成を最適化する葉緑体配置
内容:葉緑体は、光の変化に応答して細胞内配置を変えることで光合成を最適化している。たとえば葉緑体は、光の弱い曇天下では細胞表面に並ぶことで光合成を最大化し、光の強い直射日光下では細胞側面に並ぶことで光ダメージを軽減する。これらの現象は葉緑体定位運動と呼ばれ、これの調整は植物バイオマスの増加に寄与する。しかしイチゴを含めた農作物の栽培では、葉緑体定位運動が利用されていないため、植物の光合成能を十分に活用できていない。本講演では、我々が取り組んでいるイチゴの光合成の最大化を目指した葉緑体定位運動の研究に関して紹介する。また、本セミナーシリーズを主催している宇都宮大学イチゴプロジェクトについてもプロジェクト代表として紹介したい。