国立大学法人東京農工大学、国立大学法人宇都宮大学、国立大学法人埼玉大学、国立研究開発法人理化学研究所らをはじめとする国際共同研究グループは、劣悪環境に置かれた植物が生長戦略を切り換え、環境ストレスに対する適応能力を最大化させる仕組みの一端を明らかにしました。
植物は、生育に適した温和な環境条件では可能な限り生長を促進する方が有利です。一方、乾燥や塩害などの水分欠乏ストレス条件では植物ホルモン「アブシジン酸(ABA)[1]」が高蓄積し、生長が抑制されます。このとき、プロテインキナーゼ[2]の1種であるSnRK2[3]が活性化して様々な基質タンパク質をリン酸化することでストレス耐性が誘導されます。今回、共同研究グループはSnRK2キナーゼにリン酸化される新規な基質タンパク質として、Raf36キナーゼを同定しました。また、SnRK2 -Ra36複合体が植物の「温和な生育環境での生長促進」と「劣悪環境でのABA応答の強化」の間にあるバランスや切り換えを調節していることを明らかにしました(図1)。本研究の成果は、劣悪な環境条件下でも高い生育能力と強い環境ストレス耐性の両方を併せ持つ作物の創出などへ応用されることが期待されます。
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