日本学術振興会賞は、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者を早い段階から顕彰し、その研究意欲を高め、研究の発展を支援することにより、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルへ発展させることを目的とするものです。各分野を代表するトップレベルの学術研究者により構成される審査会で厳正な審査が行われ、令和2年度の審査においては、450名の中から25名の受賞が決定しました。詳しくはこちら
受賞の対象となった研究成果は「植物ホルモンのアブシシン酸の作用機構解明と応用」です。植物の乾燥ストレス応答や種子休眠に関わる植物ホルモンのアブシシン酸について、基礎と応用の両面から研究を長年に亘って、進めてきたことが高く評価されました。 詳しくは第17回受賞者及び授賞理由を参照
コロナウイルス感染症の状況を考慮して今回の授賞式は開催しないこととなり、3月10日に石田学長より賞状、賞牌及び副賞の伝達が行われました。
[岡本准教授の受賞コメント]
20年以上も植物研究に従事できるとは思いませんでした。沢山の共同研究者に恵まれ、支えられ、様々な研究が展開できたことを大変嬉しく思うと同時に、これからもいろんな事にチャレンジして、研究を展開できればと思っています。これまで支えて下さった共同研究者の皆様、学生の皆様、長年に亘って研究支援を頂いた文部科学省・日本学術振興会、そして今回の賞に推薦して頂いた宇都宮大学にこの場を借りて、感謝・御礼申し上げます。
岡本昌憲准教授のHP
[研究業績の要約]
植物の乾燥ストレス応答に必須であるアブシシン酸(ABA)の特性を作物生産に応用するためには、ABAの代謝と受容について分子レベルで理解することが必要とされていた。ABAを代謝する酵素遺伝子の機能解析を世界に先駆けて行い、植物の耐乾性付与剤の開発へと発展させた。さらに、ABA受容体の生理機能を明らかにして、ABA受容体に作用するアゴニスト(活性化物質)やアンタゴニスト(不活性化物質)の開発を世界において中心的に進めた。また、ABA受容体を植物体内に多く蓄積させることで、水消費量を抑えながら穀物生産を実現する節水型耐乾性コムギを開発した。一方で、アフリカの乾燥地で主要作物に甚大な被害をもたらす根寄生雑草ストライガの養水分奪取に関わる原因遺伝子の特定も行った。一連の研究成果は、ABAが関わる多様な植物生理現象の理解に繋がっただけでなく、気候変動によって拡大する乾燥地域での作物生産や水の保全、寄生雑草の弱体化など、人類にとって解決しなければならない安定的な食糧生産に向けた具体的な提案と解決に繋がるものである。
<本件に関する問合せ先>
宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター
増山 芳香 (マスヤマ ヨシカ)
TEL:028-649-5527 FAX:028-649-8651
Email:c-bio@cc.utsunomiya-u.ac.jp