冬虫夏草は昆虫などから発生する「きのこ」であり、古くから漢方薬として利用され、その貴重さから高値で取引されてきました。
宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターの鈴木智大准教授らは、冬虫夏草の1種であるサナギタケのレクチンと呼ばれるタンパク質の研究を行いました。レクチンとは糖鎖に結合するタンパク質で、ウイルスが宿主を認識する際にレクチン様物質を利用していることなどが知られています。
生物の細胞表面に様々な形で存在している糖鎖にレクチンが結合することで、細胞と細胞の間の情報伝達を行うなど多くの生命現象に関わっていることから、近年は研究開発のツールとしてレクチンの活用が進んでいます。
サナギタケは地中で生活する蛹を宿主として感染し、きのこ(子実体)を作ります(図)。鈴木准教授らはサナギタケのレクチンが、
1)宿主である蚕の蛹の羽化を抑制する作用があること
(冬虫夏草の感染に有利な状況を引き延ばす効果があること)
2)きのこ(子実体)の形成に関与すること
を明らかにしました。
これらの成果は、今後の生物農薬の開発や、新規の感染阻害薬の開発に大いに貢献すると期待されます。
本研究成果は、6月17日、学術雑誌「International Journal of Biological Macromolecules」オンライン版で公開されました。