野生イチゴの可能性に賭ける

栽培イチゴは、おいしさや見た目の美しさを追求したあまり、様々な環境ストレスに弱い傾向があります。遺伝的多様性が豊富な野生イチゴに立ち戻り、栽培化に役立つ情報を得るために、以下の研究を進めています。

病気の抵抗性遺伝子をつきとめる

炭疽病はイチゴ生産者を悩ませる病害の1つです。遺伝的多様性の高い野生種では、病害への抵抗性が栽培種よりも高いことが期待されます。そこで本プロジェクトでは、炭疽病菌耐性遺伝子を検出する分子マーカーを開発するため、炭疽病菌を感染させた野生イチゴで発現が大きく変動する遺伝子を調べています。

イチゴに秘められた有用成分の分析

野生イチゴには私たちが未だ知らない健康有用成分、すなわち機能性成分が含まれている可能性があります。本プロジェクトでは、野生イチゴの機能性成分の解析を試みています。これまでに、ポリフェノールの1つであるエラグ酸に加え、イチゴでは初めてとなる他の機能性成分も検出されています。

野生イチゴの地理的分布調査

私たちは、イチゴの野生種が持つ遺伝的変異の中でも、特に栽培化に有用な変異を明らかにしたいと考えています。まずは野外のどこに、どのような変異や表現型を持つ野生種が存在するのかを調べるため、野生種の地理的分布を把握することが課題です。本プロジェクトでは、北海道から九州まで、日長や気候などの環境条件の異なる地域で採取した野生種を解析の対象とします。野生種の分布を知ることは、イチゴの遺伝資源を保護する目的のためにも重要です。

野生イチゴのゲノム配列解析

野生種集団においてどれくらいの遺伝的変異が存在するかを明らかにするため、日本各地で採集した野生イチゴを用いてゲノムリシークエンスを行います。

モデル植物としてのイチゴ研究

イチゴは学術的にも優れたモデル植物としての形質を備えてます。野生イチゴを用いて遺伝子組換えやゲノム編集を用いた機能解析を行い、開花、休眠、四季成り性など、様々な形質に関わる遺伝子の特定に挑戦しています。