イチゴ炭疽病菌抵抗生品種の作出に貢献したい

炭疽病菌とは植物病原糸状菌(カビ)の一種です。感染すると萎縮枯死してしまいます。日本におけるイチゴ炭疽病菌の年間被害金額は約35億円と見積もられ1、生産者を悩ませる病害の一つです。遺伝的多様性の高い野生イチゴでは、病害への抵抗性が栽培種よりも高いことが期待されます。本プロジェクトでは、炭疽病菌を感染させた野生イチゴで発現が大きく変動する遺伝子を調べ、炭疽病菌耐性遺伝子を検出する分子マーカーの開発につなげようとしています。

イチゴ炭疽病菌塗布実験の様子

実験室内でイチゴ炭疽病菌2を培養し菌体を回収した後、綿棒で葉に塗布します3。実験では、水を塗布した対象区と、菌を塗布した菌処理区に分けて病徴を経過観察しています。野生イチゴの中でも特に強い感染耐性が見られた種(あるいは集団)については、発現遺伝子を調べることで炭疽病菌耐性遺伝子を探索します。

上手く感染すると葉に病斑が現れます(左図:黄色矢印)。

ちなみに、イチゴ炭疽病菌はColletotrichum属、バイオテロにも使用される、あの炭疽菌はBacillus属です。全く別の菌なので、炭疽病菌に感染したイチゴを食べたことで、ヒトがあの炭疽病に感染する訳ではありません。

  1. Sato & Moriwaki 2009 Microbiol Cult Coll 25(1):27-32 ↩︎
  2. 炭疽病菌株は栃木県農業試験場 研究開発部 病理昆虫研究室より分譲いただきました。 ↩︎
  3. イチゴ炭疽病菌感染実験の手法は栃木県農業試験場 生物工学研究室よりご教示いただきました。 ↩︎