植物分子農学に関する研究セミナーを不定期に開催しています。 参加方法は、随時、X(旧Twitter)でお知らせします。
開催準備中
38.2024年11月18日(月)14時30分~
場所:対面(宇都宮大学峰キャンパスゲノミクス研究棟2Fセミナー室)およびオンラインのハイブリッド形式
講演者:野口 裕司 博士(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
タイトル:イチゴ近縁野生種を用いた育種
内容:栽培イチゴの遺伝的変異を拡大するために、様々な近遠野生種との交配が試みられてきたが、野生種と栽培種との間には交雑不和合性が認められている。和合性が高いと報告されているF.vescaの他に栽培種と交雑可能な野生種を探索し、着果性の良い複数の種間雑種を作出した。香気など野生種の持つ特性の直接利用のみならず、種子繁殖型品種の母本としての利用、核置換による細胞質雄性不稔系統の作出など、種間雑種系統の育種利用を検討する。また、種間雑種初の普及品種「桃薫」や八重咲き(ペタロイド型雄性不稔)品種「MS1615-01」について紹介する。
37.2024年10月21日(月)13時30分~
場所:対面(宇都宮大学峰キャンパスゲノミクス研究棟2Fセミナー室)およびオンラインのハイブリッド形式
講演者:多田 雄一 博士(東京工科大学 応用生物学部 植物工学研究室)
タイトル:イチゴ品種候補「東京幸華(とうきょうこうか)」の作出と高糖度イチゴの栽培に向けて
内容:イチゴの糖度を高める栽培方法の研究過程で、オリジナルのイチゴ品種の作出に取り組み、越後姫とよつぼしの交配後代から高糖度系統を選抜して「東京幸華(とうきょうこうか)」と名付けた。東京幸華は、25℃、12h明期の人工気象室内での栽培では、平均糖度17.7度を示したが、2023-2024年のハウス栽培では平均糖度11.4度であった。本セミナーでは東京幸華の育成と特性について紹介するとともに、2024年に東京工科大学に設立された「食と農の未来研究センター」における東京幸華の栽培法と品質に関する研究の取り組みについても紹介する。また、これまでに市販のイチゴ品種の水耕栽培時に添加することで糖度を高める物質の検討を行っており、それらの結果についても紹介する。
36.2024年8月9日(金)14時00分~
場所:対面(宇都宮大学峰キャンパスゲノミクス研究棟2Fセミナー室)およびオンラインのハイブリッド形式
講演者:磯部 祥子 博士(東京大学大学院 農学生命科学研究科 園芸学研究室)
タイトル:NGSの技術発展とともに歩むイチゴゲノム解読の軌跡
内容:イチゴは他殖性かつ異質八倍体であるため、ゲノム構造が二倍体種よりも複雑であり、次世代型シーケンサー(NGS)が商用化された2010年頃にはゲノム解読が非常に難しい種であると考えられていた。しかし、その後のNGS技術開発の進展に伴い、ゲノム解読の精度が徐々に向上し、特に最近ではロングリードシーケンサーの普及により、相当な精度でゲノム解読を比較的容易に行うことが可能となった。さらに、深層学習を利用したツールにより、遺伝子予測も従来より高速に実施することができるようになった。その結果、複数の品種のゲノムや遺伝子配列を比較することができるパンゲノムの時代に突入している。本セミナーでは、NGS技術の進化に合わせてイチゴゲノム解読がどのように進んだのか、その軌跡を紹介する。
35.2024年6月28日(金)13時00分~
場所:対面(宇都宮大学峰キャンパスゲノミクス研究棟2Fセミナー室)およびオンラインのハイブリッド形式
講演者:高木 宏樹 博士(石川県立大学)
タイトル:次世代シーケンサーを用いたFragaria属植物における遺伝解析の展開
内容:Fragaria属植物では、2011年に二倍体野生種であるF. vescaの基準ゲノム配列がはじめて決定され、近年では、異質八倍体のオランダイチゴ (F. x ananassa) の基準ゲノム配列も決定された。それ故、様々なFragaria属植物種において次世代シーケンサー (NGS) 由来のリードを用いたリシーケンス技術によるゲノムワイドな変異箇所同定が可能になった。本セミナーでは、リシーケンスデータを用いた解析により、まず、F. vescaのEMS突然変異体において標的形質の原因変異箇所を同定した手法を紹介する。また、F. x ananassaにおいて季成り性および四季成り性を決定する遺伝子領域PFRUの座乗位置を同定した手法についても紹介する。
34.2024年6月17日(月) 12時40分〜14時10分
場所:宇都宮大学峰キャンパス ゲノミクス研究棟2階セミナー室
*遠隔受講希望者はzoonにて配信
講演者:玉木 峻 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:細胞解析技術を利用して微細藻ユーグレナのカロテノイド機能を明らかにする
内容:光合成生物が普遍的に有する色素カロテノイドは光合成、抗酸化、光応答などに機能している。微細藻類の一種であるユーグレナが持つカロテノイドの機能を明らかにするために、様々な細胞解析技術を利用して研究を行ってきた。一つ目はタイムゲート法を用いた細胞イメージングである。これによりクロロフィルの自家蛍光を排除して、細胞内の活性酸素分子の動態を蛍光色素を用いて可視化することができた。二つ目は細胞の運動軌跡の解析技術である。これにより光に応答した細胞の遊泳の様子を定量化することができた。本講義ではこれらの方法と成果について詳細に紹介する。
33.2024年6月12日(水)8時40分~10時10分
場所:オンライン
講演者:Dr.Jekson Robertlee(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:Harnessing molecular components to build a synthetic regulatory circuit: a platform for a smart metabolic reprogramming
内容:Arrangements of electrical components that work as logic gate circuits to process signals and allow electronic devices to function have brought us to the digital era. The same concepts have long been used in organisms since the beginning of life. Organisms maintain metabolisms through a chain of complex biochemical reactions processed by molecular components such as genes and protein networks. However, synthetic molecular components are needed to finetune biological phenomena through biotechnology approaches. Therefore, a clear understanding of how organisms respond to endogenous and exogenous signals at the molecular level is needed to shed our ways to finetune them to our needs. In this talk, I would like to share my experience looking for clues to identify and develop the molecular components to act differently for biotechnology purposes. I will discuss my previous research in elucidating the regulation mechanism of the key-regulatory enzyme of a metabolic pathway in the plant; how to exemplify the knowledge to aid a gene finding that produces rare compounds; and strategies to produce a high-value compound in a heterologous host. I will also discuss my recent research on developing a novel synthetic regulatory circuit in plants, which acts as an additional molecular tool for plant science in the era of synthetic biology. By carefully designing the arrangements of molecular components, we may reprogram biological functions, which brings us closer to achieving sustainability by design.
32.2024年5月27日(月)14時20分~
場所:宇都宮大学 峰キャンパス ゲノミクス研究棟2F セミナー室
講演者:戸高 大輔 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:植物の環境ストレス耐性を向上させるエタノールプライミング
内容:植物は、乾燥や高温などの環境ストレスに対し優れた耐性機構を進化的に発達させてきた。近年、ケミカルプライミングという手法によって環境ストレス耐性をさらに向上させる研究が盛んに進められている。ケミカルプライミングは、特定の化合物で植物を予め処理することでその後曝されるストレスによる障害を軽減させる技術である。我々の研究室は、古くから人間にとって身近な物質であるエタノールで植物を予め処理することにより環境ストレス耐性が強化されることを見出した。本講義では、このエタノールによるプライミング機構の仕組みを解明する研究内容について紹介する。
31.2024年5月9日(木)14:00~15:00 (第1回イチゴセミナー)
場所:ハイブリット形式(対面(ゲノミクス研究棟2Fセミナー室)およびオンライン)
講演者:吉田 梨乃 氏(東京工業大学大学院・生命理工学院 )・刑部 祐里子 博士 (東京工業大学・生命理工学院)
タイトル:天然物生合成経路の利活用による新規活性分子の創出
内容:私たちは、植物の多種多様な生理応答を理解することを目的として、モデル植物以外の植物種における遺伝子機能解析のための技術開発を進めている。イチゴは、クローンを形成して増殖する栄養繁殖を示し、モデル植物にはない特徴をもつ。そこで、私たちはイチゴの栄養繁殖の制御に重要な役割を果たす植物ホルモンとしてストリゴラクトンに着目した。高効率CRISPR-Cas9を用い、二倍体野生イチゴFragaria vescaにおいてストリゴラクトン受容体D14遺伝子機能欠損変異体 (fvd14)を作製した。本セミナーでは、イチゴ特有のD14遺伝子機能欠損変異体の表現型について紹介する。さらに、個体レベルでの表現型解析に加え、イチゴ特有のクローン個体を含む群落でのfvd14の繁殖様式を明らかにするために、フィールドを模したバット上でイチゴを育成し、カメラを用いた繁殖の経時的解析を行った。このような実験系において新たに明らかとなったfvd14の表現型についても併せて紹介し、イチゴの栄養生長と生態について議論したい。
30.2024年4月24日(水)16時00分~17時30分
場所:オンライン
講演者:淡川 孝義 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:天然物生合成経路の利活用による新規活性分子の創出
内容:天然物生合成経路の中には、共通の中間体から複数の骨格へと生合成されるものが存在し、それらの酵素反応を解析し、利用することで、多様な活性分子を合成することが可能となる。本講義では、天然物の生合成に関わる、特異な生合成酵素とその利用による物質生産について解説する。糸状菌メロテルペノイドの生合成を例に挙げると、テルペン環化には共通の中間体からいくつかの生成物を与えるバリエーションがあり、それらをゲノムマイニングして用いることで多様な生合成経路を一挙に組み上げることができる。また、酸化酵素の中には構造類似性が高いが異なる反応を触媒するものが存在し、これらを結晶構造解析し、変異体を合成し、これを反応に用いることで、酸化位置、回数が異なる新たな生成物を取得することができる。
29.2024年1月30日(火)8時40分~10時10分
場所:オンライン
講演者:金 俊植 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:遺伝子レベルで探る植物の環境耐性と成長の調和
内容:植物は、絶えず変化する野生環境の中で、成長と自己防御のバランスをとりながら生きています。過酷な条件の中で競争に打ち勝ち、効果的な成長を遂げるためには、限られたエネルギーの最適な配分と利用が不可欠です。分子遺伝学の観点から見ると、ストレス応答性遺伝子が植物の成長を抑制することはよく知られていますが、この制御メカニズムにはまだ解明されていない側面が多く存在します。私の研究は、真核生物の小胞体ストレス応答機構(unfolded protein response、UPR)に注目し、その制御因子が根の伸長成長に及ぼす影響とその分子機構の解明を目指しています。この公演では、これまでの私の研究成果とともに、植物のストレス応答性遺伝子制御機構と成長制御の研究動向を紹介します。
28.2023年11月13日(月)14時20分~15時50分
場所:オンライン
講演者:横山 大稀 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:オミクスとデータサイエンスで生態系を俯瞰する
内容:生態系は多種多様な生物が無数の環境変数と相互作用をすることで維持されています。従来の生態学では興味対象となる生物や環境変数を絞って観測することでそれらの関係性を浮き彫りにしてきました。しかし近年では、次世代シーケンサー、核磁気共鳴、誘導結合プラズマ発光分光分析等、複数の分析機器を組み合わせることで、生態系中の網羅的な生物・分子・元素情報の取得(=オミクス解析)が可能になってきました。今回の講演では、私自身が行ってきた研究を例にあげながら、オミクス解析とその数値解析(データサイエンス)を通じて生態系を俯瞰するアプローチについて紹介したいと思います。
27.2023年11月6日(月)16時00分~17時30分
場所:オンライン
講演者:早川 英介博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:質量分析インフォマティクスによる代謝物のデータサイエンス
内容:現在、質量分析は生化学、臨床研究、環境化学、食品化学など幅広い分野で活用されている。イオン化法の開発や質量分析計の発達により、多様な分子種をハイスループットで効率的に分析することが可能になってきた。その一方、分析データの肥大化と複雑化、さらに研究分野の多様化および他分野との連携が進んだことから高度なデータ解析技術の需要が高まっている。近年、多変量解析、機械学習や様々なインフォマティクス技術が質量分析のデータ解析に導入され、先進的な研究に活用されている。本講義では、代謝物やその他の低分子化合物の分析を中心に、質量分析の基礎から質量分析インフォマティクス技術についての解説と最新の応用例を紹介する。
26.2023年7月24日(月)14時20分~15時50分
場所:オンライン
講演者:戸高 大輔博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:植物の環境ストレス耐性を向上させるエタノールプライミング
内容:植物は、乾燥や高温などの環境ストレスに対し優れた耐性機構を進化的に発達させてきた。この耐性機構に関する知見を応用して、分子育種学的なアプローチによって環境ストレス耐性植物を創出するための研究が盛んに行われている。一方、ケミカルプライミングという手法によって環境ストレス耐性を向上させる研究も盛んに進められている。ケミカルプライミングは、特定の化合物で植物を予め処理することでその後曝されるストレスによる障害を軽減させる技術である。我々はこれまでにエタノールで植物を予め処理することにより環境ストレス耐性が強化されることを見出した。本講義では、エタノールに着目した理由、エタノールによるプライミング機構の仕組みを解明する取り組み、およびロボットによるエタノールの植物への処理の自動化について紹介する。
25.2023年6月26日(月)12時40分~14時10分
場所:オンライン
講演者:佐々木和樹博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:光る蛋白質を使って生細胞内のシグナル伝達を担う蛋白質修飾を可視化検出する方法の開発
内容:細胞内で起きている現象をリアルタイムに捉えるために、光る蛋白質は用いられてきました。特に従来の生化学的な手法では検出することが難しかった蛋白質の局在・蛋白質間相互作用・蛋白質修飾のダイナミックな変化を追跡するために蛍光蛋白質を使ったアプローチが行われてきました。本セミナーでは蛍光蛋白質を用いた蛋白質修飾を検出する方法と、その応用としてがん治療薬の細胞内での効果を“見える”化する方法について紹介します。また、大規模な化合物ライブラリーの中から薬の種となるリード化合物を探すためには、ハイスループットなスクリーニングシステムを設計することが重要です。現在使われているものから最新のものまで、スクリーニングに使われている光を用いた検出法を紹介します。
24.2023年5月29日(月)12時40分~14時10分
場所:ゲノミクス研究棟2階セミナー室+オンライン
講演者:深沢嘉紀准教授(宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター)
タイトル:高速な植物ゲノム配列解析と見えてきた新たな課題
内容:次世代シーケンサー(NGS)が生命科学研究の現場で使われるようになり、多くの新しい方法と、そして発見がもたらされてきた。近年、NGSで問題とされていた短さを克服し、一分子由来といった特徴を持つロングリードと呼ばれる技術が使われ出しており、ゲノム配列獲得や多型検出で顕著な成果を上げ出し始めている。こうした新しい方法を用いることで再構築したユーカリ属のゲノムなどを例にして、改善されてきた点を議論したい。また、こうした発展を受けて可能になってきた構造多型と呼ばれる変異の解析を説明する。最後に、植物ゲノム配列解析の現場で見えてきた新たな課題を紹介したい。
23.2023年5月22日(月)14時20分~15時50分
場所:オンライン
講演者:上田実博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:ヒストンアセチル化修飾による植物の環境ストレス応答機構とその制御
内容:近年世界各地で頻発する急激な気候変動は、作物の収量低下など農業生産への被害を深刻化させています。そのため、植物の環境ストレス応答の理解と環境ストレス耐性を強化する技術開発が世界各国で進められています。代表的な手法として、ストレス耐性を強化するための有用遺伝子を探索し、同定した遺伝子導入によりストレス耐性を強化する試みがこれまで進められてきました。しかし、導入した遺伝子を恒常的に発現させてしまうと、ストレス耐性を強化する半面、生育阻害などの農業生産における不良形質を誘導してしまうケースが多く見られます。つまり、恒常的なストレス応答の誘導を避け、可逆的にストレス応答を制御できる技術が求められています。演者は、化合物により活性調節が可能であることが知られているエピジェネティック制御に関わる酵素に着目し、可逆的にストレス応答を操作する研究を進めています。 本講義では、数あるエピジェネティック制御のうち、演者らが携わったヒストンアセチル化修飾による環境ストレス応答機構の解明を進めた研究を紹介すると共に、その動作原理やエピゲノム制御による環境ストレス応答操作を目指した研究と今後の展望について紹介します。
22.2023年2月24日(金)16時~17時30分
場所:オンライン講演者:佐藤諒一博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:分子生物学のこれまでとこれから-生命デザインについて-
内容:現代社会に限らず、人の社会は他生物との関係によって(食物や資材、エネルギーなどの形で)支えられてきました。分子生物学とは生物を分子レベルで理解する学問であり、現代の社会-生物間関係の発展を支える中心的な役割を担っています。本セミナーでは、分子生物学がこれまで担ってきた社会的役を、生物学史を参考にしながら解説し、これから期待されている役割についても紹介します。また、分子生物学が将来的に果たすべき役割の一つとしての「生命デザイン」がどのようなもので、現在どのような研究がなされているのかを、私たちの研究と最新の知見の中から紹介します。
21.2023年1月31日(火)8時40分~10時10分
場所:オンライン
講演者:内海好規博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:持続的な生産や新規な澱粉の構築を目指したキャッサバ分子育種
研究内容:キャッサバ(学名:Manihot esculenta Crantz.)は貯蔵器官として、塊根(根のイモ)を形成して、澱粉(デンプン)を蓄積します。熱帯・亜熱帯地域で広く栽培され、東南アジアでは澱粉産業を中心に地域経済を大きく担っています。昨今、気候変動適応策の観点からも注目されつつあります。一方で、キャッサバゲノムの高いヘテロ接合性は育種の障害にもなっています。私は気候変動下での持続的な生産や新たな澱粉市場の構築を目指して、育種の効率化と迅速化に向けた技術開発を進めながら、どのように塊根が形成されているのか、その分子機構の解明を目指しています。また、新規な性質をもつキャッサバ澱粉の作成を試みています。本講演ではこれまでに演者らが携わったこれら研究について紹介いたします。
20.2023年1月27日(金)16時~
場所:オンライン
講演者:中野亮平博士 NAKANO, Ryohei Thomas
(Max Planck Institute for Plant Breeding Research)
タイトル:マイクロバイオータとの不均一な相互作用によって規定される根の発生と免疫
内容:野外環境において植物は常に微生物に晒されており、その組織内外には複雑な微生物コミュニティ(植物マイクロバイオータ)を保持している。
その中で、マイクロバイオータを構成する微生物群は根の生育や免疫を含む多様な生理機能に大きな影響を与えることがわかっている。複雑な土壌生態系の中で植物の根が健康な生育を保つために、これらのマイクロバイオータの存在下でどのようにその発生や免疫を制御しているのか、また微生物はどのようにして宿主の制御機構に干渉しているのか、これまでの研究で明らかになったその分子機構の一端を紹介する。また、その分子機構の根幹をなす根やマイクロバイオータの不均一性について、既に得られている成果をもとに今後の研究アイディアについて議論したい。
19.2022年12月16日(金)11時~
場所:ゲノミクス研究棟2Fセミナー室
講演者:白澤健太博士(かずさDNA研究所 先端研究開発部)
タイトル:ゲノム科学で迫る身近なサイエンス
内容:生物の設計図であるゲノムを解析して生命を理解しようとするゲノム科学は、モデル生物に端を発し、その成果を食糧生産に応用しようとする農学においても欠かすことができない学問分野となっている。進歩を続けるゲノム科学の対象はモデル生物や農作物にとどまらず、より身近な植物にまでその応用範囲を広げている。本講演では、日本人に馴染みの深いソメイヨシノ、あちこちに生えているカタバミ、庭先に置いてある金魚鉢の中の生態系についての取り組みを紹介する。
18.2022年11月14日(月)
場所:オンライン
講演者:山田隼嗣博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:未来社会に向けた計測インフォマティクス
内容:微生物生態系から環境資源に至るまで、地球環境、生命は多くの物理的、化学的、生物学的要因によって動的に変動し、そのプロファイルは全体的な状態の変化を反映する。環境の健康を評価および予測するには、これらの要因を包括的に理解する「エクスポソームパラダイム」、つまりすべての物質への暴露に基づく全体論的アプローチが必要である。さらに、地球規模での人口増加に対応した持続可能な開発を考える上で、資源循環と人間社会における廃棄物のリサイクルは重要課題である。この観点から、自然環境、農業、養殖、産業における排水処理、バイオマスの分解と生分解性材料の設計は、ホットな話題である。核磁気共鳴 (NMR) は、生物、環境、材料など、分子複雑系サンプルの分析に大きな利点を有する。ここでは、溶液状態、固体状態、時間領域 NMRの理解を促進するための応用例を概説する。
NMR を中心としたデータサイエンスにより、持続可能な未来に向けて自然環境と人間社会の両方でエクスポソームを評価できることを紹介する。また、工学部で蛋白質工学、修士課程で腸内細菌研究、製薬企業で医薬品情報学に出会い、その後博士課程で計測インフォマティクスの研究にて学位取得した道のりについてもふれ、日々の研究活動と将来を考える機会を提供したい。
17.2022年10月12日(水)
場所:オンライン
講演者:八代田陽子博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:酵母をつかった創薬研究
内容:酒・パンをつくる上で私たちの食生活に欠かせない酵母は、基礎研究・応用研究を行う上で優れたモデル生物でもある。研究室における酵母の魅力の一つは、遺伝学的手法が古くから確立されており、遺伝子ライブラリー、遺伝子改変株ライブラリー等、網羅的解析ツールが整っていることである。それらのツールをつかって、遺伝子機能やタンパク質機能の解明等、さまざまな研究が展開されている。本セミナーでは、酵母の網羅的解析ツールを用いた創薬に関わる研究(薬剤の標的を同定する、有用な薬剤を探索する等)について紹介する。
16.2022年7月25日(月)12時40分〜
場所:オンライン
講演者:徳永浩樹博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:熱帯作物キャッサバの生産性向上のための分子育種学的な研究および東南アジアにおけるキャッサバの病害虫防除に関する取り組みの紹介
内容:キャッサバは熱帯・亜熱帯地域で栽培される多年生の低木であり、塊根が収穫対象の作物です。栽培が容易であり不良環境でも生育可能であるため発展途上国の貧困地帯の多くで栽培されています。あまり馴染みのない作物ですが世界全体で栽培面積をみるとイモ作物類の中で最も多く栽培されていて世界8億人の主食となっています。実は日本にもタピオカ粉や加工デンプンとして多く輸入されており食料品や工業品に溶け込んでおり、日本にとっても不可欠な作物です。 講演者は昨年まで5年間東南アジア(主にベトナム)に滞在してキャッサバの病害虫防除や野外フィールド調査のプロジェクトに参加していました。現在は、最近東南アジアで被害が広がっているキャッサバモザイク病の問題に加えて、実際にキャッサバの栽培圃場を調査する中で気づいた課題を自分なりの方法で解決しようと研究をしています。本講演では、野外フィールドにおけるキャッサバの開花・分枝現象の調査、ゲノム編集技術による有用農業形質の付与、キャッサバモザイク病抵抗性品種開発に向けた技術開発、また自らの経験を交えた国際農業支援活動についてお話しします。
15.2022年7月11日(月)14時20分〜
場所:オンライン
講演者:庄司翼博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:薬用資源植物と有用天然化合物
内容:植物は多種多様な生理活性を示すアルカロイドやテルペノイドなどの天然化合物を生合成・蓄積する。植物由来の天然化合物は薬、色素、香料、工業原料として利用されている。分子生物学・ゲノム科学・メタボロミクスの導入により、生合成酵素・トランスポーター・転写因子が同定され、代謝システムを植物生理の文脈で語ることを可能となった。近年も次世代シークエンス、質量分析機、ゲノム編集の導入が研究展開を加速させている。最新の研究展開と有用物質生産への応用について概説する。
14.2022年6月27日(月)14時20分〜
場所:オンライン
講演者:鈴木洋弥博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:トウモロコシの屈性反応分子機構解明に向けて
内容:植物は固着生物であり基本的に移動することがないが、様々な刺激に応答して多様な運動を示している。光、重力、水分、接触などの刺激に応答して成長方向を変化させる屈性反応も植物の運動の一つである。本講義では代表的な屈性反応の内、演者が研究を進めてきたトウモロコシ地上部の光屈性と、地下部の重力屈性について紹介する。またそこから派生する農学的なアプローチの可能性についても議論したい。
13.2022年6月10日(金)16時00分〜
場所:オンライン
講演者:熊野貴宏博士(ベジョー・ジャパン株式会社 代表取締役)
タイトル:種苗会社の仕事、イメージできますか?
内容:「品種にまさる技術なし」という言葉をご存知でしょうか。
種苗会社が開発・供給する「タネ(品種)」無くして、美味しくて、見た目もきれいで、健康に良い野菜を楽しむことはできません。優秀な品種は、栽培技術の向上や貯蔵・加工等の効率化においても大きな役割を果たしています。日本、ドイツ、オランダ、3つの国の種苗会社で働いた経験を持つ熊野が、自らの経験談も織り交ぜながら、種苗会社の仕事についてお話いたします。
12.2022年6月6日(月)14時20分〜
場所:オンライン
講演者:戸高大輔博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:植物の環境ストレス耐性を向上させるケミカルプライミング
内容:植物は、乾燥や高温などの環境ストレスに対し優れた耐性機構を進化的に発達させてきた。この耐性機構に関する知見を応用して、分子育種学的なアプローチによってストレス耐性植物を創出するための研究が盛んに行われている。一方、最近ケミカルプライミングという手法を用いた環境ストレス耐性を向上させる研究も盛んに進められている。ケミカルプライミング法は、例えば特定の化合物で植物を予め処理しその後曝されるストレス条件下での耐性を向上させる技術である。
本講義では、これまでに演者らが携わった環境ストレス応答の研究を紹介すると共に、環境ストレス耐性を向上させるケミカルプライミングに関する研究について紹介する。
11.2022年4月20日(水)16時00分〜
場所:オンライン
講演者:廣田隆一博士(広島大学 大学院統合生命科学研究科)
タイトル:リンのバイオテクノロジー
内容:リンは環境中では制限物質になりやすく、環境微生物の多くはリン飢餓状態にある。しかしながら、バクテリア細胞内のリン濃度は非常に高い濃度(10 mM〜)に保たれており、細胞外に対して千倍から一万倍以上の濃度勾配を形成する。これは、バクテリアが持つ優れたリン酸取り込みと蓄積能力によるものである。一方、リン肥料の原料となるリン鉱石は枯渇が懸念されており、今後増加する世界人口を支える食糧生産のために、リンの有効利用技術開発は必要不可欠である。近年、バクテリアが利用するリンはリン酸(リン酸化数:+V)だけでなく、還元型リン化合物(リン酸化数:+III以下)も利用できる能力があることが示されており、リンの生物循環は従来考えられていた様式とは大きく異なる可能性があると考えられる。
本講演では、還元型リン化合物を利用するバクテリアの代謝機能の解析と、その機能を活用したリン資源の有効活用のためのバイオテクノロジーの可能性について紹介する。
10.2022年1月19日(水)16時00分〜
場所:1号館1A22教室 + オンライン(ハイブリッド形式)
講演者:越水静博士(明治大学 農学部)
タイトル:植物の生殖における進化
内容:生殖は種が存続するために必要な生命現象である。陸上植物では卵生殖が進化し精子と卵によって生殖が行われるようになった。また被子植物では虫媒花は優美な花を咲かせることで昆虫による花粉媒介を可能にした。発表者はこういった植物の生殖における進化に興味があり、ここではこれまでに明らかにした、花器官形成因子MADSドメインタンパク質の機能進化と、分子進化によって精子形成に関与するようになった基底小体タンパク質BLD10について、そして新たに着手している花の構造色研究について紹介する。
9.2021年11月8日(月)16時00分〜
場所:オンライン
講演者:浅井秀太博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:植物・病原菌間相互作用機構の理解と応用
内容:植物と病原菌は、共進化の過程で、それぞれ強固な生体防御システム、および複雑な感染機構を発展させてきたと考えられている。本講義では、この植物と病原菌の攻防における、最新の知見を紹介すると共に、演者らが進めている病害防除に向けた応用研究について紹介する。
8.2021年9月22日(水)16時00分〜
場所:オンライン
講演者:岩瀬哲博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:植物の再生能力の分子メカニズムとその応用
内容:植物は様々なストレスに応じて再生能を発揮する。単離した一つの細胞からでも芽や根、胚を再生することができる。この能力をコントロール技術が確立された1950年代以降、私たちヒトは植物から更なる恩恵受けて来たが、植物がどのように再生能力を発揮するのかについてはまだ理解の途中にいる。本講義では、植物の再生能力とその応用について概観するとともに、演者らが進めている再生能力の分子機構解明に向けた研究について紹介し、分子農学的なアプローチの可能性について議論したい。
7.2021年7月12日(月)12時40分〜
場所:オンライン
講演者:豊岡公徳博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:電子顕微鏡解析法: 生物の超微細構造を視るには?
内容:電子顕微鏡は、光学顕微鏡では見る事のできない微小な構造を視ることができる。電子顕微鏡が開発され100年近く経つが、近年の技術開発により、これまで視ることの出来なかった微細構造が次々と明らかになっている。本講義では、植物や動物など生物の組織・細胞内の現象を捉えるために、演者らが撮影した顕微鏡写真を織り交ぜながら、開発してきた電子顕微鏡技術を紹介するとともに、最新の研究成果や電子顕微鏡技術を紹介する。
6.2021年5月19日(水)16時00分〜
場所:オンライン
講演者:松井求博士(東京大学 大学院理学系研究科)
タイトル:微生物×生態×進化:”古い問題”に”新しい手法”で挑む
内容:次世代シーケンサー(NGS)の飛躍的な発展は、バイオインフォマティシャンにとって大いなる福音であると同時に厄介な問題でもあった。大規模データは全体の俯瞰を可能にする一方で、我々が理解するには”複雑すぎる”のである。したがって、生物学における”本質的な問い”に答えるためには、このような大規模データから人間が理解可能な情報をいかに取り出すかが鍵になる。本セミナーでは、我々が最近開発した
(1)Bacteriaの形態情報データベース「Bac2feature(バックトゥザフィーチャー)」
(2)生態系におけるニッチ構造の解明に資する「逆相関ネットワーク解析」
(3)State-of-the-Artな系統解析手法「GS法とPANJEP法」
を紹介しながら、NGS時代における微生物×生態×進化という古くて新しい学問分野の今後についても議論したい。
5.2021年3月5日(金)16時00分〜
場所:オンライン
講演者:中林亮博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:植物メタボロミクスの多次元化
内容:近年、植物メタボロミクスでは、データの多次元化により化学的に多様な代謝物の解析精度が向上してきた。本セミナーでは、超高分解能質量分析、イメージング質量分析、MS/MSスペクトルの類似性解析、安定同位体標識による植物二次(特異的)代謝物の解析例を紹介する。
4.2021年2月17日(水)16時00分~
場所:オンライン
講演者:李哲揆博士(東京農工大 農学研究院)
タイトル:「土壌微生物の生態と農業利用の可能性」
内容:1gの土壌中にはわずか数千万〜数億匹の微生物が存在し、彼らは有機物分解や養分循環など様々な役割を担う。しかし、環境中の微生物のうち99%は未培養だと言われており、残り99%の微生物について解明するために様々なチャレンジが行われている。今回は安定同位体を用いて土壌微生物の生態解明を行った研究事例について紹介する。
また近年では、次世代シークエンサーの発展により培養に頼らず膨大な微生物データが得られるようになった。この微生物情報を用いて有用微生物の選抜や土壌診断技術も開発したのでその点についても言及する。
3.2021年1月14日(木)16時00分〜
場所:オンライン
講演者:NanGu博士(宇都宮大学)
タイトル:DNA damage triggers reprogramming of differentiated
cells into stem cells in Physcomitrella patens
2.2020年12月21日(月)10時20分〜
場所:オンライン
講演者:小田原真樹博士(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
タイトル:機能性ペプチドを用いた植物の改変
内容:機能性ペプチドとは細胞透過性能や核酸結合能を持つペプチドである。現在我々のグループで進められているERATOプロジェクトでは、この機能性ペプチドを用いて核酸やタンパク質を細胞内に送達することにより様々な植物の改変(特に葉緑体やミトコンドリアの改変)を行っており、それらについて紹介する。
1.2020年12月7日(月)10時20分〜
場所:オンライン
講演者:土屋康佑博士(京都大学 大学院工学研究科)
タイトル:酵素を利用した機能性ポリペプチドの合成と応用
内容:酵素(プロテアーゼ)を利用した化学酵素重合法は、水系でポリペプチドの合成が可能な環境にやさしい合成手法であり、様々なアミノ酸配列を持つポリペプチドを簡便に合成することが可能である。我々はこの技術を用いて、構造タンパク質を模倣した材料や植物改変を達成するための機能性ポリペプチドなど、多岐にわたる分野へ応用可能なポリペプチド材料の開発を行っている。本セミナーでは、特に植物への遺伝子導入に特化した機能を持つ様々なポリペプチドの設計と合成について概説する。