未知ストリゴラクトン(strigolactone)の構造解析
ストリゴラクトン(Strigolactone)とは?
ストリゴラクトンは、根寄生植物Striga luteaの発芽刺激物質として単離されたstrigol およびその構造類縁体の総称です。ストライガ(Striga spp.)やオロバンキ(Orobanche spp.)などの根寄生植物はアフリカや東南アジアなどを中心に農作物生産に甚大な被害を与えており、現在ではフランス、ドイツ、オーストラリアなどにも広がっています。ストリゴラクトンは根寄生植物の宿主、非宿主を問わず、植物界に広く存在しており、また、植物は単一ではなく、複数のストリゴラクトンを生産・分泌しています。
植物が自身を危機に曝すような根寄生雑草の発芽刺激物質SLを生産・分泌する理由は不明であったが、2005年、SLの1種である5-deoxystrigolが、重要な共生菌であるAM菌の宿主認識に関わる菌糸分岐誘導物質として単離された。すなわち植物は、無機栄養分、特にリン酸を供給するAM菌の共生を促すシグナルとしてSLを根圏に分泌していることが分かった。さらに植物体内では、SLあるいはその代謝産物が、植物地上部の枝分れを抑制する植物ホルモンとして機能していることが明らかとなった。これらの研究を契機に多くの研究者がSLの生理機能研究に参画した結果、植物の根および根毛の成長制御、根粒菌の共生促進、光形態形成など、SLの新たな機能が次々と明らかにされている。
ストリゴラクトンを明らかにすることは・・・
植物が生産・分泌するストリゴラクトンの生合成と作用機構の解明が進むと、天然物有機化学、植物生理学、生化学などの関連分野の進展に貢献するだけではなく、根寄生雑草の防除法の確立、AM菌の共生促進による作物生産性の向上、さらには地上部の形態制御法の開発が可能になると期待されています。