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野生・栽培イチゴの実態把握に向けたマルチオミックスアプローチ

私たちが普段目にする栽培イチゴ(2n=56)のゲノムは、祖先種である野生イチゴ(2n=14)から受け継いだ複数のサブゲノムで構成されています。自然選択によって無作為な選抜が行われている野生イチゴは、人為選択の末に作られた栽培イチゴよりもゲノム構造がシンプルなうえに遺伝的多様性が豊富なため、育種に有利な表現型に創出につながる遺伝子の単離や遺伝子マーカーの開発に適した材料といえます。さらに、イチゴは世界的にも商業的な価値が高く、国内での産出額は野菜ではトマトに次いで2位であるにもかかわらず、植物としての性質の解明は驚くほど進んでいません。私たちは、ゲノム、トランスクリプトーム、メタボロームなどのオミックスデータを統合的に解析し、病害虫の感染や環境ストレスに対する応答機構、または生理障害の詳細を明らかにすることで育種において有益な洞察を得たいと考えています。当プロジェクトの活動を通して、育種に役立つ遺伝子マーカー開発や植物ホルモンをはじめとする化学分析のプラットフォームを構築・形成し、将来は植物や育種研究の拠点となることを目指しています。
研究者紹介
宇都宮大学野生イチゴプロジェクトは、バイオサイエンス教育研究センターが設立した植物分子農学研究部門の推進プロジェクトです。イチゴを研究材料とした生理学・分子生物学のパイオニアを筆頭に、植物育種学、植物細胞工学、植物病理学、植物生理化学、バイオインフォマティクスの各分野の最先端の知識と技術を集結することで、イチゴ栽培への貢献を目指すべく野生イチゴの実態に迫ります。

大西 孝幸 准教授
ORCiD
イチゴの倍数性育種・ゲノム編集・接ぎ木技術開発・オルガネラゲノム編集技術の開発

蕪山 由己人 教授
ORCiD
野生イチゴの栄養生理作用解析

宮川 一志 准教授
ORCiD
分子系統解析
プロジェクトアドバイザー

篠崎 一雄 特別顧問
植物の転写因子ネットワークの研究において世界的に著名な研究者であり、特に干ばつなどの環境ストレス応答に関する研究で知られる。2023年には ClarivateのHighly Cited Researchers に選出。国立遺伝学研究所の研究員、名古屋大学の教員、理化学研究所 植物科学研究センターのセンター長を歴任し、2020年から宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センターの特別顧問を務める。2020年の国際生物学賞、2009年の日本植物生理学会賞、2023年の日本学士院賞など、数々の権威ある賞を受賞。
つながりたい
宇都宮大学イチゴプロジェクトは、イチゴ研究に関連する分野で多くの企業、農業試験場、大学の研究室と連携し、研究の発展を目指しています。イチゴの研究をしたい学生の皆様からのご質問(研究室の所属、大学院進学、日本学術振興会特別研究員受け入れ)も歓迎いたします。お気軽にお問い合わせください。