岡本昌憲 助教らが食糧生産に甚大な被害をもたらす寄生植物ストライガの養水分収奪機構を解明 ~”魔女の雑草”防除方法の開発に期待~

投稿者: | 2019年2月25日

 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS(注1))の一環として、神戸大学大学院農学研究科の杉本幸裕教授の研究グループは、宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターの岡本昌憲助教らとの共同研究により、サブサハラアフリカ地域で食糧生産に甚大な被害をもたらしている根寄生雑草Striga hermonthica(ストライガ (注2))が、高い蒸散(注3) を維持するために特異なタンパク質を持っていることを発見しました。ストライガは宿主から吸い上げて自身に向かう蒸散流によって養水分を収奪していると考えられることから、このタンパク質はストライガ防除方法の開発に向けた新たな標的になると期待されます。   この研究成果は、2月26日(日本時間)に、国際学術雑誌「Nature Plants」に掲載されました。 

ポイント

  • ストライガはサハラ砂漠以南のアフリカで食糧生産を阻害する深刻な生物的要因である。
  • ストライガは活発に蒸散を維持することで宿主の養水分を奪って生育する。
  • 気孔を閉鎖して蒸散を低下させる植物ホルモン「アブシシン酸(ABA)(注4)」の働きがストライガでは欠落していることを発見し、その原因が脱リン酸化タンパク質の一つShPP2C1であることを突き止めた。
  • 本研究成果は、ストライガの養水分収奪において重要な役割を担うShPP2C1が新たなストライガ防除方法開発の標的になる可能性を示している。
ストライガの被害が深刻なソルガム畑(スーダン)
 ストライガの養水分収奪モデル


(注1)1. SATREPS

   地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS、サトレップス)とは、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)、独立行政法人 国際協力機構(JICA)の連携により、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3~5年間の研究プログラム。日本国内など、相手国内以外で必要な研究費についてはJSTが委託研究費として支援、開発途上国内で必要な経費については、JICAが技術協力プロジェクト実施の枠組みにおいて支援する。国際共同研究全体の研究開発マネジメントは、国内研究機関へのファンディングプロジェクト運営ノウハウを持つJSTと、開発途上国への技術協力を実施するJICAが協力して行う。

      JSTホームページ:https://www.jst.go.jp/global/about.html

      JICAホームページ:http://www.jica.go.jp/activities/schemes/science/index.html

(注2)Striga hermonthica (ストライガ, Giant witchweed)

   サハラ砂漠以南のアフリカに広く分布する寄生雑草の一種。これらの地域の主要作物であるソルガム、トウモロコシ、ミレットなどの根に寄生し、収量を大幅に低下させる。“魔女の雑草”とも呼ばれ、0.2 mm程度の小さな種子を一個体が何万粒も生産するため、いったん耕作地に侵入すると駆除することは極めて困難である。アフリカの食糧生産を阻害する最大の生物的要因であり、被害は拡大の一途を辿っているため、防除方法の確立が喫緊の課題となっている。

(注3)蒸散

   植物体内の水分が気孔と呼ばれる小さな穴(数µm (マイクロメートル) 程度)から水蒸気として排出される現象。植物体内の水の約90%は、この小さな穴を通じて失われる。これにより植物の根から地上部に向けての水の流れが形成され、根が土壌から水分を吸収する際の推進力となる。

(注4)アブシシン酸(アブシジン酸やabscisic acidを略してABAとも表記される)

   植物が乾燥時に生合成する植物ホルモンの一種。種子や芽の休眠、蒸散の低下など、植物の環境ストレスに対する耐性を高める作用を有する。陸上植物はABAの生合成および情報伝達経路を保有しているとされ、植物の陸上進出に必須の物質であると考えられている。

※本プレスリリースの詳細については神戸大学様のホームページをご覧ください。http://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2019_02_26_01.html

<担当・問合せ先>宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター助教 岡本 昌憲(オカモト マサノリ) Tel:028-649-5555 Fax:028-649-5555 E-mail:okamo※cc.utsunomiya-u.ac.jp(※を@に置き換えてください。)http://c-bio.mine.utsunomiya-u.ac.jp/okamoto/