平成28年度 iP-U受講生インタビュー

iP-U 平成28年度年度活動報告

栃木県立宇都宮中央女子高等学校2年生 星野 成美 さん

“カラス侵入禁止”「東日本大震災で被害にあった建物にカラスが住み着いて問題になっていたんです。そこでこんな貼り紙をしたら、半年でカラスの侵入が減少しました」。星野さんはiP-Uの二年目、才能育成プランで雑草と里山の科学教育研究センターの竹田先生とカラスの研究をしています。
さて、もちろんカラスが文字を読んだわけではありません。竹田先生によるとこれは「とんち」です。この貼り紙は、話題をつくって人を集めるために設置しました。この貼り紙が効果を示したということは、カラスは人の視線を気にしているのではないか?というのがこの研究の着想です。
「カラスを飼育している小屋の中に入って、カラスのいる東西南北の方向を見た場合と、携帯や本を見るために下を向いた場合を設定し、カラスの移動を計測しました。結果は、カラスが多い方向へ目線を向けるとカラスは視線と反対の方向へ逃げ込みました。しかし、携帯や本など、カラス以外の方向へ視線を向けている時、カラスはあまり移動しません。このことからカラスは人の視線を気にしていることが示唆されました」。結果を学会でポスター発表したところ、高校生の発表は初で、驚きを持って迎えられました。
竹田先生は、身の回りの何でもないことの中にも科学が隠れていると言います。「研究室ではよく雑談をするんです。無駄話の中から研究のキッカケが生まれることはとても多いです」。もちろん雑談だけではありません。「着想だけではだめです。ちゃんと数字を取ってしっかり分析する。科学にする必要があります」。実験中にどのような事が起きるか予想して、徹底的に話し合い詳細な計画をたてます。「生産性はディスカッションを通じて高まります」。
研究は続きます。取材当日も、カラス一匹一匹を追跡して、カラスの個体差について分析していました。星野さんのiP-Uでの研究はもうすぐ終わりますが、竹田先生は「データ整理という経験の中で学んでくれることがあれば」と語りました。

 

栃木県立宇都宮女子高等学校1年生 小名木 彩花 さん

良い意味で焦りを感じます。皆、将来の夢にこんな熱意をもってるんだ、って」。小名木さんは一年目、基盤プランの受講生です。基盤プランでは、理系科目だけでなく幅広く様々なことを学びます。研究倫理ワークショップやプレゼン力養成講座などでは、他の受講生とチームを組み、頻繁に話し合いながら授業が進められます。「初対面の人と話すのはちょっと緊張しましたが、他の人と話すよいきっかけになりました」。自分の意見をちゃんと話す。相手の意見をしっかりと聞く。それが仲良くなる近道だと気付いた小名木さんは、他の受講生と話すのが何よりの楽しみだそうです。「iP-Uに参加している人は、何に興味がある、これを極めたいっていうのがはっきりしている人が多いです。そこにだんだん興味が出てきました。色々な人のことを聞いて触発されることもあるし、人と話すことはとても大切だと思います」。
iP-Uで忙しい日々が続きますが、“コーチング入門”で得た知識で、時間の使い方がうまくなり、学校の成績もよくなりました。
以前は漠然と理系の道に進みたいと思っていたそうですが、今はiP-Uで学んだ土壌浸食(環境工学・農学部大澤先生)に興味がでてきました。「いろんな講座でこんな分野があるんだ!って気付いて、自分の道が広がりました。将来は研究者になりたいと思っています」。


雪の結晶が好きな牧野さんは、自然科学以外にもロボティクス入門でのプログラミングが面白かったといいます。「iP-Uがなかったら絶対興味を持たなかったと思います。視野が広がりました」。将来は気象関係の仕事につきたいそうです。
小学校の頃から高専や大学で遊んでいたという榎本さんは、情報工学、特にARやVRに興味があります。「元々ひとりで何かするのが好きでしたが、iP-Uで色々な人と意見交換や協力する機会が増えて、楽しさがわかってきました」。
高橋さんは、有機化学に興味があります。iP-Uで学んだことは、知識だけではないそうです。「価値観や考え方の幅が広がりました。日常生活でも判断が必要な時、先生方の言葉を思い出したりします」。
山歩きや釣りが趣味の小林さんは、iP-Uで「将来のビジョンが明確になってきた」と語りました。将来はフィールドワークのある研究がしたいそうです。
白田さんは選択科目B、英語にはまっています。「この前先生と計算したら、全部で40コマ(20時間)もとっていました」。以前は苦手意識のあった外国人の方とも、今では気兼ねなく接することができるようになったそうです。
飯嶌さんは、感性工学に興味があります。感性工学は、人間の感性を研究する新しい工学分野です。「将来は、機械制御やゲームのプログラマーになりたいです」と語りました。


金子さん、篠崎さん、佐藤さんは、iP-Uの一年目ですが、農学部相田先生の研究室で微化石の研究を始めています。地質学はまず自分の足で歩いて試料を採集することから始まります。ニュージーランドでのフィールドワークはいつでもできるわけではないので、iP-Uの受講生も調査の時期に合わせて一年目からの参加です。調査するのは中生代三畳紀初期から中期の地層です。堆積岩に含まれる放散虫の微化石は年代ごとに種が変わるので、それぞれの年代で放散虫がどのように進化を遂げたのか詳しく調べれば、地層の年代を示す指標になります。iP-Uに参加して、精力的に活動する金子さん、篠崎さん、佐藤さん。脳科学にも興味があるという金子さんは、iP-Uで知り合った仲間と興味ある話題について議論できることが楽しいようです。「自分の得意なところ、苦手なところが他人と比較することでよくわかるようになりました」。将来は医療官憲に進みたいという篠崎さんは、「理科の中にもいろいろな分野があるということがわかりました。たくさんの研究を土台にしていまの科学があるんだな、と思います」。高校の先輩から研究を引き継ぐという佐藤さんは、「元は生物が好きだったのですが、基盤プランで色々な講義を受けているうちに、自分の知識が広がって、多くのことに興味が出てきました」。と語ってくれました。
また、iP-Uで昨年から研究をしていた新村憲人さん(栃木県立宇都宮高校2年生)、益子佳公さん(作新学院高等学校2年生)のグループは、放散虫の内部構造に焦点を当てた研究を学会で発表しました。

 

横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校1年生 鈴木 凛 さん

鈴木さんは、横浜から3時間半かけて通っています。「でも何より研究が面白いので、まったく苦になりません」。鈴木さんはiP-U一年目ですが、才能育成プランが始まっています。
バイオサイエンス教育研究センターの児玉先生の下、ゼニゴケの塩ストレス応答の研究をしています。塩害は、灌漑農業の多い海外で大きな問題になっています。植物の塩ストレスに対する応答を解明することは、飢餓など多くの社会問題を解決する可能性があります。
忙しい日々を過ごす鈴木さんですが、毎日丁寧にタスク管理をしています。タスクには勉強だけでなく、家族の手伝いなども盛り込みます。「海外の貧困がとても深刻だと知り、多くの人の役に立ちたい、自分の経験したことを活かしたいと思いました」。目標はビジネスコンテストでの優勝です。
「去年の自分が今の自分を見たら、まったく別人だと思うはずです。iP-Uには自分を変えるチャンスがあります」。

 

栃木県立宇都宮高等学校2年生 小林 海翔 さん

小林さんは才能育成プランで、工学部の小池先生と矢嶋先生にそれぞれ数学と物理を教わっています。「大学の先生に個人授業してもらえるなんて、とても贅沢ですよね」。
元々数学や物理が好きだった小林さんは、中学校の時にはすでに自分で微分積分を勉強していました。「初めは数学オリンピックや物理チャレンジで入賞したくて始めたんです。でも、教科書の説明に納得の行かないことがあって調べ始めたら、とても面白くて止まらなくなりました」。高校生になってからは、自分で大学の数学・物理を勉強していました。ところが、「大学では、高校のようにカリキュラムが決まっているわけではないので、どんな順番で何を勉強したらよいかわからないという状況に陥ってしまったんです。そこでiP-Uに応募しました」。自分の疑問は、何を知れば解決するのか?小池先生と矢嶋先生が、そこに指針を与えます。「大学の数学・物理はやっぱり難しいです。でも、やっぱり楽しいです」。小林さんは将来、数学か物理の研究者になりたいそうです。

 

栃木県立宇都宮工業高等学校2年生 髙﨑 小夏 さん

「子供の頃、ボールペンを分解した時に見つけたバネに興味を持って以来、バネが大好きなんです」。髙﨑さんは、バネに対する強い情熱を持っています。自宅のバネコレクションはもはや数え切れず。iP-Uでは、一年目ながらその情熱をかわれて研究室に所属し、工学研究科の関川先生のもとでバネの振動について研究しました。
髙﨑さんは実験の中で、ある発見をしました。関川先生は、この発見のときのことを今でもよく覚えています。「先生、バネを揺らす時に、上から落とした時と中間から落とした時で跳ね方が違います。これなんですか?」
この実験では、バネの初期位置が振動板の上から始めても、バネを上から落としても、多くの場合、しばらくするとバネの跳ね方は同じになりますが、ある特定の条件では、バネの初期位置によってその後の跳ね方が違ったままになります。髙﨑さんたちのグループは、こういった研究と発見をまとめて論文にし、国際会議で口頭発表しました。
発表へは、多くの課題を一つずつクリアしていきました。国際会議での発表は当然英語です。たとえ発音が日本語英語でもアクセントは正しくないと伝わりません。そこで髙﨑さんは発表原稿に出てくるすべての単語のアクセントを調べ、覚えました。髙﨑さんのノートには、学んだことのすべてが“思い出”として、とても丁寧にまとめられています。
髙﨑さんは将来「研究者になってバネにかんする研究をしたいです。iP‐Uでバネと振動に深い関わりがあるとわかったので、振動に関する研究も面白そうだなって思います」。

撮影・取材  勝戸 篤人