挨拶

ここ十数年、日本経済が停滞し、世界の中での存在感は低下し、若者の閉塞感が増してきています。加えて政治の停滞と東日本大震災の大打撃、いまだ出口の見えない原発事故の終息などから将来の先行きはますます不透明になっています。
このような時、日本を元気にするためにはわれわれはまず「地域を元気にすること」から始めなければなりません。地域のイノベーションは人と人との心の通い合いを大切にすることから始まります。人間中心のイノベーション展開こそ長続きし心を豊かにしてくれます。その地域にしかない資源や価値に注目し、いくつかの資源を組み合わせて新たな価値をつくれば世界にも通用する新たな価値が出来上がります。結果として地域が元気になっていきます。地域を元気にするには分野や職業、立場や年齢を問わず、様々な人が知恵を出し合える場が必要です。異なる資源の組み合わせによって新たな価値を創り出す共創活動を私は新異分野連携と呼んでいますが、このような新異分野連携につながる人と人との出会いが地域イノベーション創出の第一歩であると思います。
しもつけバイオクラスターは首都圏近郊の地産地消や食の安全、安心に貢献するために産学官が強力に連携し、新たな人の出会いから新しい連携が生まれ、その結果、地域のイノベーションが生まれることを期待して、文部科学省の支援の下に3 年前に立ち上げました。この3 年間にフォーラムや交流会、訪問相談あるいはしもつけサロンなどの活動を通して多くの人の出会いが生まれ、その中から新たな連携が発生して30 を越える共同研究が始まりました。研究の成果が目に見える形でイノベーションとなるには少し時間がかかりますが、種まきとしての役割は十分に果たせたものと考えています。
しもつけバイオクラスターの事業はここでいったん終了しますが、宇都宮大学としてはこれからも地域を元気にするために、新異分野連携をめざしてさまざまな連携に取り組んでまいります。

平成25 年3 月

shinmura
宇都宮大学 学長 進村 武男