2023年度開催

第107回C-Bioセミナー(植物分子農学シリーズ)

2024年1月30日(火)8時40分~
場所:オンライン
講演者:金 俊植 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:遺伝子レベルで探る植物の環境耐性と成長の調和
内容:植物は、絶えず変化する野生環境の中で、成長と自己防御のバランスをとりながら生きています。過酷な条件の中で競争に打ち勝ち、効果的な成長を遂げるためには、限られたエネルギーの最適な配分と利用が不可欠です。分子遺伝学の観点から見ると、ストレス応答性遺伝子が植物の成長を抑制することはよく知られていますが、この制御メカニズムにはまだ解明されていない側面が多く存在します。私の研究は、真核生物の小胞体ストレス応答機構(unfolded protein response、UPR)に注目し、その制御因子が根の伸長成長に及ぼす影響とその分子機構の解明を目指しています。この公演では、これまでの私の研究成果とともに、植物のストレス応答性遺伝子制御機構と成長制御の研究動向を紹介します。

第106回C-Bioセミナー(植物分子農学シリーズ)

2023年11月13日(月)14時20分~
場所:オンライン
講演者:横山 大稀 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:オミクスとデータサイエンスで生態系を俯瞰する
内容:生態系は多種多様な生物が無数の環境変数と相互作用をすることで維持されています。従来の生態学では興味対象となる生物や環境変数を絞って観測することでそれらの関係性を浮き彫りにしてきました。しかし近年では、次世代シーケンサー、核磁気共鳴、誘導結合プラズマ発光分光分析等、複数の分析機器を組み合わせることで、生態系中の網羅的な生物・分子・元素情報の取得(=オミクス解析)が可能になってきました。今回の講演では、私自身が行ってきた研究を例にあげながら、オミクス解析とその数値解析(データサイエンス)を通じて生態系を俯瞰するアプローチについて紹介したいと思います。

第105回C-Bioセミナー(植物分子農学シリーズ)

2023年11月6日(月)16時00分~
場所:オンライン
講演者:早川 英介博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:質量分析インフォマティクスによる代謝物のデータサイエンス
内容:現在、質量分析は生化学、臨床研究、環境化学、食品化学など幅広い分野で活用されている。イオン化法の開発や質量分析計の発達により、多様な分子種をハイスループットで効率的に分析することが可能になってきた。その一方、分析データの肥大化と複雑化、さらに研究分野の多様化および他分野との連携が進んだことから高度なデータ解析技術の需要が高まっている。近年、多変量解析、機械学習や様々なインフォマティクス技術が質量分析のデータ解析に導入され、先進的な研究に活用されている。本講義では、代謝物やその他の低分子化合物の分析を中心に、質量分析の基礎から質量分析インフォマティクス技術についての解説と最新の応用例を紹介する。

第104回C-Bioセミナー(植物分子農学シリーズ)

2023年7月24日(月)14時20分~
場所:オンライン
講演者:戸高 大輔博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:植物の環境ストレス耐性を向上させるエタノールプライミング
内容:植物は、乾燥や高温などの環境ストレスに対し優れた耐性機構を進化的に発達させてきた。この耐性機構に関する知見を応用して、分子育種学的なアプローチによって環境ストレス耐性植物を創出するための研究が盛んに行われている。一方、ケミカルプライミングという手法によって環境ストレス耐性を向上させる研究も盛んに進められている。ケミカルプライミングは、特定の化合物で植物を予め処理することでその後曝されるストレスによる障害を軽減させる技術である。我々はこれまでにエタノールで植物を予め処理することにより環境ストレス耐性が強化されることを見出した。本講義では、エタノールに着目した理由、エタノールによるプライミング機構の仕組みを解明する取り組み、およびロボットによるエタノールの植物への処理の自動化について紹介する。

第103回C-Bioセミナー(植物分子農学シリーズ)

日時:2023年6月26日(月)12時40分〜
場所:オンライン
講演者:佐々木 和樹 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:光る蛋白質を使って生細胞内のシグナル伝達を担う蛋白質修飾を可視化検出する方法の開発
内容:細胞内で起きている現象をリアルタイムに捉えるために、光る蛋白質は用いられてきました。特に従来の生化学的な手法では検出することが難しかった蛋白質の局在・蛋白質間相互作用・蛋白質修飾のダイナミックな変化を追跡するために蛍光蛋白質を使ったアプローチが行われてきました。本セミナーでは蛍光蛋白質を用いた蛋白質修飾を検出する方法と、その応用としてがん治療薬の細胞内での効果を“見える”化する方法について紹介します。また、大規模な化合物ライブラリーの中から薬の種となるリード化合物を探すためには、ハイスループットなスクリーニングシステムを設計することが重要です。現在使われているものから最新のものまで、スクリーニングに使われている光を用いた検出法を紹介します。

第102回C-Bioセミナー(植物分子農学シリーズ)

日時:2023年5月29日(月)12時40分~
場所:ゲノミクス研究棟2階セミナー室+オンライン
講演者:深沢 嘉紀 准教授(宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター)
タイトル:高速な植物ゲノム配列解析と見えてきた新たな課題
内容:次世代シーケンサー(NGS)が生命科学研究の現場で使われるようになり、多くの新しい方法と、そして発見がもたらされてきた。近年、NGSで問題とされていた短さを克服し、一分子由来といった特徴を持つロングリードと呼ばれる技術が使われ出しており、ゲノム配列獲得や多型検出で顕著な成果を上げ出し始めている。こうした新しい方法を用いることで再構築したユーカリ属のゲノムなどを例にして、改善されてきた点を議論したい。また、こうした発展を受けて可能になってきた構造多型と呼ばれる変異の解析を説明する。最後に、植物ゲノム配列解析の現場で見えてきた新たな課題を紹介したい。

第101回C-Bioセミナー(植物分子農学シリーズ)

日時:2023年5月22日(月)14時20分~
場所:オンライン
講演者:上田 実 博士(理化学研究所環境資源科学研究センター)
タイトル:ヒストンアセチル化修飾による植物の環境ストレス応答機構とその制御
内容:近年世界各地で頻発する急激な気候変動は、作物の収量低下など農業生産への被害を深刻化させています。そのため、植物の環境ストレス応答の理解と環境ストレス耐性を強化する技術開発が世界各国で進められています。代表的な手法として、ストレス耐性を強化するための有用遺伝子を探索し、同定した遺伝子導入によりストレス耐性を強化する試みがこれまで進められてきました。しかし、導入した遺伝子を恒常的に発現させてしまうと、ストレス耐性を強化する半面、生育阻害などの農業生産における不良形質を誘導してしまうケースが多く見られます。つまり、恒常的なストレス応答の誘導を避け、可逆的にストレス応答を制御できる技術が求められています。演者は、化合物により活性調節が可能であることが知られているエピジェネティック制御に関わる酵素に着目し、可逆的にストレス応答を操作する研究を進めています。
本講義では、数あるエピジェネティック制御のうち、演者らが携わったヒストンアセチル化修飾による環境ストレス応答機構の解明を進めた研究を紹介すると共に、その動作原理やエピゲノム制御による環境ストレス応答操作を目指した研究と今後の展望について紹介します。

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