宮川 一志 准教授が日本動物学会奨励賞を受賞

投稿者: | 2018年6月4日

宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターの専任教員である宮川 一志(みやかわ ひとし)准教授が、公益社団法人・日本動物学会(http://www.zoology.or.jp)の奨励賞を受賞しました。受賞課題は「ミジンコの表現型可塑性を制御する内分泌機構の解明」です。授賞式および受賞講演は、平成30年9月13-15日に札幌で開催される第89回大会(http://www.zoology.or.jp/annual-meeting/1/)で行われます。


生物が様々な環境シグナルに応じて形や振る舞い(表現型)を作りかえる表現型可塑性は生物が環境に適応するための非常に重要な能力であり、その制御機構の理解は近年の発生生物学や進化生物学の大きなトピックの一つです。宮川准教授は主に甲殻類であるミジンコを使用して表現型可塑性の発生制御と進化における内分泌機構の役割を解明すべく研究に取り組んできました。

ミジンコは、天敵存在下で防御形態へと変化する「誘導防御」や、通常クローン繁殖でありながら環境変化に応じてオスを産生し有性生殖を行う「環境依存型性決定」および「生殖戦略転換」など、非常に顕著な表現型可塑性を多数見せる生物です。これらはミジンコが過酷な自然環境下で生き残るための非常に優れた戦略ですが、宮川准教授が取り組むまでどのような仕組みで制御されているかはほとんど明らかとなっていませんでした。

宮川准教授は分子生物学的手法や生理学的手法を駆使することで、昆虫ホルモンの一種である幼若ホルモンなどの内分泌因子や、様々な遺伝子がミジンコの表現型可塑性の制御に関与することを明らかにしました。また、その過程で幼若ホルモンのシグナルを伝達する重要な分子である「幼若ホルモン受容体」をミジンコで同定することに成功しました。これは昆虫類以外から幼若ホルモン受容体を見出した世界で初めての成果です。

現在見られる多様な節足動物類の進化において、幼若ホルモンが果たしてきた役割は重要です。宮川准教授が取り組んできたミジンコの表現型可塑性の分子機構についての研究は、今後の無脊椎動物の内分泌学や進化生物学、および環境科学の発展につながると期待されます。

 

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担当:大野