陽川憲特任助教と蔭西知子研究員が動物と同様に植物も麻酔にかかることを発見

投稿者: | 2017年12月20日

宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターの陽川憲(ようかわけん)特任助教と蔭西知子(かげにしともこ)研究員は、動物に使われる麻酔薬によって、植物も麻酔にかかることを発見しました。この発見によって、将来、植物が麻酔薬の開発のための実験材料になることが示唆されました。本研究は、ドイツ、チェコ、イタリアの研究グループとの共同で実施され、2017年12月11日付の英科学誌「Annals of Botany」に掲載されました。

麻酔薬の使用は、19世紀にエーテル吸入によって手術中の患者から痛みを除いたものが初めてでした。それ以来、エーテルをはじめ様々な化学物質が麻酔作用を有することが発見されてきました。そうして現在に至るまで、世界中の多くの手術現場で大量の麻酔薬が使用されています。それにも関わらず、麻酔がどのようなメカニズムで神経細胞に作用し、意識を失わせるかについては多くの議論が存在するものの、麻酔の発見以来150年間ほとんどが不明のままです。

今回、陽川特任助教と蔭西研究員は、ハエトリグサやオジギソウなどの動く植物を使って、植物が麻酔にかかることを発見しました。また麻酔にかかっている植物の細胞では、細胞膜と活動電位の状態が変化していることを突き止め、麻酔薬の効果は細胞レベルにおいて動物と植物は共通した機構がある可能性を示しました。また将来的に、植物が麻酔薬の作用機序の解明にとって有用なモデルになりうること、さらにヒトへの麻酔の作用を研究するために、植物実験がこれまでの動物実験の代替になりうる可能性を示唆しました。

【論文】

K Yokawa, T Kagenishi, A Pavlovič, S Gall, M Weiland, S Mancuso, F Baluška “Anaesthetics stop diverse plant organ movements, affect endocytic vesicle recycling and ROS homeostasis, and block action potentials in Venus flytraps” Annals of Botany, mcx155, https://doi.org/10.1093/aob/mcx155

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